碑との対話(十首歌)

二十歳にもならず戦地で斃れたる戦士の碑草分けて訪う   

令和二年戦後七十五年なり生あれば百歳の戦死者弔う

時経てば遺族などとは言う人なく見捨てられるに違いない戦死者

英霊はすでに死語なり見捨てられ草葉の蔭の軍人墓碑はも

碑の戦死者と向かう年月の重ねかさねて老いを深める

妻も子もなくて逝きたる戦死者の幾百人の墓碑巡る日々

妻と子を遺し征きたる我が父と同じ運命の碑に額づくも

先の大戦太平洋戦争も今日露戦争の次元になりし歴史や悲し

コロナ禍を避けて軍人墓地巡り死者との対話かくも楽しや

碑に向かいておれば笑み見せて若過ぎる父ふと顕わるゝ