大塚布見子エッセイ・歌論

①短歌雑感

「新機軸の危険性」「難解歌を推す危険性」「初心に引き戻す作業」「写生の哲学的立証」など数年にわたって「サキクサ」誌上に載せたものである。思ったことをごまかさずに、けんめいに書くのが礼儀だと信じている。(あとがき) 短歌研究社昭和60年刊

②続短歌雑感

「自然から遠ざかった歌人」「定跡の重要性」「作歌の潜勢力を養う」「自然の中に生きる証しを」「作品がすべてを語る」俵万智の歌については「伝統詩形の持つ奥深さ、調べ、ひろがりと言ったものはあまり感じられない」と言う。短歌研究社 昭和63年刊

③続々短歌雑感

「短歌も決して言葉のたくらみを弄すしてはならない。気取って言葉を弄するとかえって俗談平話に落ちることを知らねばならない。サキクサはこうした企みこころを去り、無心の平明の歌をこれからも深めてゆきたいと思っている」短歌研究社 平成元年刊

④続短歌歳時記

春の部1234月もののふの八十をとめらが⋯堅香子の花(家持) 夏の部5678 月 託馬野に生ふる紫草衣に染め(笠郎女)秋の部 曼殊沙華一むら燃えて秋陽つよし(利玄)冬の部 淡海の海夕波千鳥(人麿) 季節感を喪失した時から人間の不幸 短歌研究社 平成8年刊

➄花の歌歳時記

梅・椿など70種の花の写真を載せ、その歌を詠んだ万葉の歌を初め、自作の歌を2首ほど紹介している。山茶花の花に寄せて 山茶花の花の闇に匂ひて咲く花の上にはるけくみすまるの星(布見子)咲くだけの光集めて節分草(高橋悦男) 短歌研究社 平成20 年刊

⑥続花の歌歳時記

「サキクサ」に毎月取り上げ続けた70種の花と歌。春の花黄が多きとぞ蒲公英に菜の花山吹わきても連翹(布見子)わが屋戸に韓藍蒔き生し枯れぬれど懲りずて亦も蒔かむとぞ思ふ(赤人)手に取れば桐の反射の薄青き新聞紙こそ泣かまほしけれ(白秋) 短歌研究社 平成27年

⑦新しい短歌の作法

「短歌現代」の平成6年4月号より9年3月号まで連載したもの。短歌新聞社選書として刊行された「これまでのように奇を衒ったり、意表をついたり、言い回しや意味づけなど知的技巧に走ったものなどはそらぞらしくむなしく思われる」現代短歌社 平成9年刊

⑧布見子の歌百首

 夫大塚雅春が選んだ布見子の歌百首歌の解説。生前「サキクサ」に59 回連載した。心臓を病んで15年間病身を鞭打って愛妻の歌を解説した。「ふるさとの讃岐山脈かなしけれ触るればこはるるごとき水色」父が入院していた病室から眺めて詠んだ歌。もの言えぬ父をみとっている悲しみか流れているとみる。短歌新聞社 平成15年刊