『和漢朗詠集』初冬・三五二
【訓読】十月江南天気好し 憐むべし冬の景の春に似て華しきことを
【通釈】十月の江南は天気うるわしい。愛しもうではないか、冬の光が春のように華やかなことを。
【付記】我が国で言う小春日和を詠んだ詩の一節。「十月」は陰暦十月、初冬。「江南」は長江(揚子江)下流の南側。作者の白氏は五十代前半、江南の地方官を勤めていた。「好」の訓は『和漢朗詠集』の古写本の古点に従ったもので、「ことむなし」は「こともなし」(太平無事である意)から来た語。「冬景」は冬の日射し。「似春華」は「春華に似たり」とも訓める。「春華」は春のはなやかさ。出典は白氏文集巻二十の「早秋」(移動)。
【関連歌】下2302、員外3025、員外3238