『旧制一高の非戦の歌 反戦譜』
運(めぐ)るもの星とは呼びて/罌粟(けし)のごと砂子の如く/人の住む星は転(まろ)びつ
この第一節から始まる「一高寮歌」はただものではない。鋭く時代を感じ取る作者、そしてそれを見抜いて『反戦譜』として上梓した本書著者に一目を置く。瀬戸内の海辺に育ち、大都に遊学、戦時の世相に埋没せず「軍事教練・査閲に対するアンチミリタリズム」「特高・憲兵による弾圧と寮生の受難」の中で、かろうじて、精一杯生きる青年の純粋な姿、その心根の丈高さが伺える。必死の抵抗の鎮魂の手向けはこういう書を言う。
「大君の命かしこみ 愛しけ真子の手離り島伝ゆく」(万葉集巻20・4414) より引用
三中出身戦没者『鎮魂譜』石川宙夫・野口雅澄共著