遊行柳
- 清水ながるゝの柳は蘆野の里にありて田の畔にある。此所の郡守戸部某の此柳みせばやなど、折々にの給ひ聞え給ふを、いづくのほどにやと思ひしを、今日此柳のかげにこそ立より侍つれ。
- 田一枚植て立去る柳かな
しのぶの里
あくれば、しのぶもぢ摺の石を尋て忍ぶのさとに 行。遥山陰の小里に石半土に埋てあり。里の童部 の来りて教ける。昔は此山の上に侍しを往来の人 の麦草をあらして此石を試侍をにくみて此谷につ き落せば、石の面下ざまにふしたりと云。さもあ るべき事にや。
- 早苗とる手もとや昔しのぶ摺