みすゞと雅輔

松本侑子著『みすゞと雅輔』伝記小説 令和2年刊

「みんなちがって、みんないい」と詠った金子みすゞ。本名テルコ。

テルコキュウシススグカエレ 昭和5年雅輔(25歳)が姉金子みすゞの急死を知らされる。

 一方弟雅輔は84 歳で孤独死。遺骨は下関の上山家の墓に納められているが、テルの墓がある仙崎の遍照寺に分骨され、姉の隣に眠っている。

 本作品は、事実を基に創作したフィクションである。終章末尾は次のように閉じられている。

 たとえ一枚の小さな葉でさえも、激しい雨に打たれた後は、また日の光を求めて伸びゆく逞しい生命力を備えている。雅輔はテルに語りかけた。僕は、太陽の明るさヘ向かって、顔を上げて進んでいくよ、テルちゃんと同じ、文筆の芸術家を目指していくよ。