金子金次郎著『連歌師宗祇の実像』

金子金次郎著『連歌師宗祇の実像』平成11年 角川書店

『新撰筑波集』の編者飯尾宗祇の実像に迫る連歌研究第一人者の著書。出自、自立、連歌師として作品を遺した過程を探索する。既存の伝記資料が多くなく、その結節点を埋めるに推定も止むなきをえぬ。「謎のまま残してしまう」ことに疑問を感じ、実像に迫る渾身の意欲を示されている。この研究で日本学士院賞をもらっているので、知る人ぞ知る連歌研究の権威。すでに鬼籍に入っている先生で、小生卒業論文の指導教官でお情けを頂いた。爾後六十年を経て歴史のかなたに霞んでいる。『新撰犬筑波集』の山崎宗鑑をLifeworkにしている者にとっては、因縁めいたものを感じている。ただ、本書では一言も宗鑑については触れていない。宗祇の純正連歌から見れば、宗鑑の俳諧連歌が無視されても黙するしかない。盾突く何ものもない。生まれが近江の江東で同じ、将軍義尚が近江鈎の陣で没した時の共通点、何も言及されていない。