喪失感

身近な人の死を経験していない人などあろうはずはない

半世紀葬式出したことはないそれが幸せな人ではあるまい

三十年刻みに親子孫が逝くそれが順当な幸運な家系

自分一人百歳越えて何が幸か逆縁の肉親ありしはずなり

人の命よりも大事にせしものもありて煩悩人の憐れよ

断捨離の中から掘り出し写真手跡は自分で捨てえず

後継者遺族などにはすぐ捨てらるものならば自ら棄てる

すっきりとしたはずなのに棄て去ったものいとしくててまらなくなる

執着心あるはずはない遺物提げ要る人あれば捧げたいと思う