望の日にさし出づる月の高高に君に坐せて何をか思はむ 作者未詳『万葉集』
天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも 安倍仲麻呂『古今集』
この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば 藤原道長『小右記』
望月に藻塩の粥を盛り見てて満ちてもよよと澄まんとぞ思ふ 藤原教長『教長集』
秋を経て名はふりゆけど望月のいや珍らなる光そひつつ 貞成親王『沙玉和歌集』
玉くしげ半ばの秋の三日のよにあらはしいだす望月もがな 正徹『草根集』
吹く風も袖寒からで望月の欠けたることもなき今宵かな 井上文雄『調鶴集』
十五夜の月は生絹の被衣して男をみなの寝し国をゆく 若山牧水『海の国』
人去りて後の静けき月の面や満月となりて照りわたるなり 上田三四二『涌井』
満月は静かに上りくろがねの鉄橋に夜の力しみ出づ 馬場あき子『葡萄唐草』