自分なりの歩き遍路

『これがほんまの四国遍路』大野正義
 
 本書の特長を次の4項目にしぼって、紹介しておきたい。
(1)眞念の功績を重視していること
 その著「四國邊路道指南」貞享4年(1687)刊行。宿泊所情報の懇切丁寧ぶりが図示されている。札所の固定化、普及に最大の功績があった。次のように著者の見方が面白い。
「四国遍路の大衆化を一気に推し進めたものは彼の善意ではなく、無学さである」と言ってのけている。「札所に番号を割り当てるという暴挙、いや大発明を刊行」できたとも言っている。大衆化のマイナス面も論じている。「巡礼濃度」の低下、精神的充実感が希薄になっていることを指摘している。
(2)四国人を特別扱いしていない。
 四国の人は親切で、接待をしてくれた体験を述べる場合が多いが、著者は特別扱いしていない。「お互い様文化」が培った近世以来のセイフティーネットが、いまだに絶えることなく息づいているからだとしている。私自身四国人で近くに一山二霊場があって遍路に出会うことは多いが、残念ながらあえて接待しようとしていないのが現実である。
(3)歩き遍路体験からのアドバイス
 実践面でのこと細かい留意点が書かれていて参考になることが多い。もちろん自己流だが「マメのできない靴」の図示。二本まとめた自家製の金剛杖。消耗が少ない「和式歩行」
(4)従来のコース選びにもの申す
 遍路道に決まりはないというのが大前提。近道主義・省エネ主義こそ基本。「難渋主義」に意味はない。逆打ちについてのデマ。お宿に関するここだけの話等々。
 本書は札所毎のガイドブックではなく、遍路の心得、その意味するものなどに個性とオリジナリティがあって、なかなかの好著である。