終わりなき旅

『21世紀 仏教への旅 インド編下』五木寛之
 
 一冊の文庫本を携えて、なおも旅を続けている。中村元訳「ブッダ最後の旅ー大パリニッパーナ経」(岩波文庫)である。
  さあ、修行僧たちよ。お前たちに告げよう、「もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく修行を完成しなさい」と。(158ページ)
 これがブッダの生前に発した最後の言葉となった。
 ブッダの最後の旅の終着点、クシナガラの涅槃堂。35歳で悟りを開いてから80歳でこの地で入滅するまで、ブッダ亜大陸を歩きに歩き、説法を続けた。その伝道の精神を問うのが著者「仏教の旅」であった。
 安逸な日常に慣れきった身体にはきつい旅だったと言う。しかし、さまざまなことを知り、ブッダとはこういう人だったのか、仏教の始原とはこういうものであったのか、とひとつひとつ発見し、目覚めていく旅でもあった。旅の途中、寂しい寒村で亡くなった。そういうブッダの姿に、心から共感し、あこがれ、尊敬の念を感じずにはいられないのだった。
 ブッダの死から2500年後の今も「仏教の旅」はずっと続いている。私の旅も、まだ、終わらない。21世紀の仏教をを考える旅は、これからも続く。はたしてその先に何が見えてくるのだろうか。
 本書巻末はこのように結ばれていて、今後の五木寛之「仏教の旅」が末長く続くことを期待してやまない。