天翔けた永遠の生命

『いつまでも、いつまでもお元気で』知覧特攻平和会館・編
 本書は戦後62年目の終戦記念日に発行されたものです。毎年この頃になると、このような書物も恒例の行事のように出版されます。そして、改めて「あの戦争責任がどうだったのか」を問い直そうとするかのようです。「特攻隊なるものをただ賛美するだけではなく…そこに至る社会的責任に目をつぶってはならない」などという怜悧な見解まで述べられるのです。
 
 本書はそのようなことを厳しく指弾するものではなく、「若者たちが命を捨てても守りたかったもの、それは何だったのでしょうか」という読者への問いかけです。それは、簡単には答えられないでしょう。「お国のため」「愛する人のため」とは言っても、彼らは本当には分かっていなかったような気がしてなりません。「大命を拝し」「喜んで」いるように見せて、散っていったような気がしてなりません。
  
 本書には18歳から29歳まで33人、平均年齢21・6歳の若者たちの遺書が収載されています。他書と違うのは、全ページ海・空を中心とした自然をバックにして、飛び立った空間が実感できるようになっています。ところどころ、「かもめのジョナサン」を思わせる白い鳥も象徴性を帯びて、効果的です。
【永遠の命として天翔ける】ことにおいて、若き翼の特攻隊員も孤高のかもめジョナサンも同価値と思えるのです。