水を飲みどんどん歩く

『病気にならない人は知っている』トルドー
 本書は、〈徹底〉した「自然療法」の推奨と、〈徹底〉した科学文明批判(薬=毒)である。
「薬を飲めば飲むほどあなたは病気になる。なぜなら医薬品は毒だからだ」という極論に立つ。また、市販の食品に含まれる化学物質を挙げ、自然食品等による体内に蓄積する毒素についても厳しい目を向ける。その他、畳みかけるように日常生活の隅々まで巣くっている科学文明の害毒・弊害を指摘している。その論拠については、いずれも確たるものを示していない。著者によると、それをくだくだしく説明するスペースがないからだという。
 本書の「たたみかける論調」に圧倒され、呑み込まれてしまいそうにもなるが、半信半疑の立場で一つひとつ検討してみると異常な神経の使いようと見直される項目も少なくない。ただ、そこまで過敏にならないと、「現状は危うい」と言えるかもしれない。宣伝に踊らされない、腰の据わった自然体、「自然食」「自然療法」、人間が動物本然の姿に回帰することが今こそ必要とされる時代はない。
「水を飲み、どんどん歩け」
「大量生産された食品は、百パーセント有害」
 これだけはっきりと特別大書できる人はそう多くあるまい。
 手厳しく医療業界を批判して言う。
「信頼できる科学的根拠」「科学的に試された」「科学的に証明された」といった言い回しをよくするが、くるくる変わる学説や理論にすぎない、固く信じるに足りないと否定している。「あなたの体内から毒素を追い出そう」という一句も象徴的な意味のようで、印象に残る。 
 誰が読んでも、文句を言いたい、または、感服するところが満載され、毀誉褒貶さまざまあって当然と思う。