僕は小説を一番多く読んでいる

『小説の終焉』川西 政明
「僕は小説が好きだ。日本で小説を一番多く読んでいる一人だと思う」と自負(豪語)する文芸評論家だけある。日本近代小説の終末宣言をだれが一体できるだろうか。「私の終焉」「家の終焉」「性の終焉」「神の終焉」というように近代小説のテーマに決着がつき、あるいは題材としての分野では「戦争の終焉」「革命の終焉」「原爆の終焉」「存在の終焉」「歴史の終焉」というように終息宣言をするのである。定かならぬテーマで模索する現代小説。かつては芥川の目指した理知の文学、志賀の目指した自我の文学等のような輪郭を、ここに来て失ってしまったような現代文学。その目指すものの見えない不確かな文学〈小説らしきもの〉しかない。近代文学成立120年後の今を憂慮する、日本文学警告の一書とみなすこともできようか(雅)