世界遺産余録

『2007世界遺産年報』
 2006年新登録の世界遺産は18件。本書では、そのうち2件が特集されている。
 ジェノヴァは海運共和国時代の栄華の香り漂わす大邸宅の建築美で登録される。コロンブスの生誕地としても知られるイタリア北西部の港町。イタリアで41番目というからこの国の遺産の豊富さが推し量られる。
 中国四川省ジャイアントパンダを育む太古の森。7つの自然保護区群に約500頭が生息。9つの風景名勝区を合わせている。他にレッサーパンダなど絶滅危惧種の動植物が数多く含まれる。
危機遺産」と称して、これまで登録されていて損傷などで重大な危機に瀕しているものも紹介されている。その一つは消えていくコンゴの野生動物である。
 さて、現在登録済み日本の世界遺産13件のこの一年間の動きも紹介されている。原爆ドーム(高さ25m)近くの高層マンション(14階・高さ45m)の建設地はドームの南東わずか100mの場所であるが、高さ規制の条例制定以前に着工されたため、規制の対象にならない。
 特別レポート「景観の危機」として、ドイツのケルン大聖堂危機遺産に登録されたのについで、日本でも最近、マンションが原爆ドーム周辺で建設されていることが問題になっている。「負の遺産」と言われたりする原爆ドームについては感慨深いものがある。
 今、日本の「暫定リスト」は、石見銀山遺跡、平泉の文化遺産、古都鎌倉の寺院・神社ほか、彦根城がある。さて、いつ正式登録されるか、期待し見守っていきたい。