奥の細道 最上川

     『おくのほそ道』  最上川
 
最上川のらんと、 大石田と云ふ所に日和を待つ。 爰に古き誹諧の種こぼれて、忘れぬ花のむかしをしたひ、 芦角一声の心をやはらげ、此の道にさぐりあしゝて、 新古ふた道にふみまよふといへども、みちしるべする 人しなければと、わりなき 一巻残しぬ。このたびの風流爰に至れり。
 最上川はみちのくより出でて、山形を 水上とす。こてん・はやぶさなど云ふおそろしき 難所有り。
板敷の北を流れて、 果は酒田の海に入る。 左右 山覆ひ、茂みの中に船を下 す。 是に稲つみたるをや、いな船といふならし。
白糸の瀧は青葉の 隙に落ちて、 仙人堂岸に臨みて立つ。水みなぎつて 舟あやうし。
       五月雨をあつめて早し 最上川
 
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