鳥の歌(10首歌)

春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影に【うぐひす】鳴くも(大伴家持)

古畑のそばの立つ木にゐる【鳩】の友よぶ声のすごき夕暮れ(西行法師)

ふるさとを出でて五年、病をえて、かの【閑古鳥】を夢きけるかな(石川啄木)

木蓮の花の木の間に飛ぶ【雀】遠くは行かね声の寂しさ(北原白秋)

ゆふやみになりしみづうみの木立より黒鳥の【鵜】は乱れて飛びぬ(斎藤茂吉)

紅梅にみぞれ雪降りてゐたりしが苑のなか丹頂の【鶴)にも降れる(前川佐美雄)

天に近きレストランなればぽきぽきとわが折りて食べるは【雁】の足ならめ(葛原妙子)

【雉】の鋭ごゑおこりくさむら戦ぎたりこころ異変に飢うるさびしさ(葛原妙子)

亡き父にかくて似てゆくわれならむか【燕】来る日も髭剃りながら(寺山修司)

前橋の【雲雀】料理を売る店をあまたたびわれ夢におとなふ(岡井隆)