うしろ姿のしぐれて行くか 種田山頭火
春山のうしろから煙が出だした 尾崎放哉
後ろにも髪抜け落つる山河かな 永田耕衣
山姥のうしろ姿のすさまじや 桂 信子
木がらしの吹行くうしろすがた哉 服部嵐雪
宿命的に人間は自己の後ろ姿を見ることができない。自己脱却、自己超越、自己韜晦、自己憐憫などと洒落込み、諧謔化しようとて、駄目だ。軽率な俳人がどうあがいても、これしきの句しかものしえない。 (なお、上掲俳句は「人間個人のうしろ姿」でないものもあるが、この語の使用者は本質的に裏面透視を試みようとしている)