隣人農婦澄子さん「コスモス」歌誌掲載歌10首
梟の遠く鳴く声夫と聞く葱田につひの防除終へ来て
玉葱の採種に賭けるがその成果天に任せて動噴しまふ
毎年を葱種子づくりに夢もちて励めどならずわれら老いゆく
娶らざるままに老いゆく男ゐて雨しぶくなかひたに代掻く
ここまでと補植をやめて標置く明日という日のなきにあらねば
不埒者と詰められもせむ田植措き歌会に来たりしまこと申せば
所得税少なからねば売らず持つ虫の棲家の畑草を刈る
出漁の船のエンジン遠ざかる音に日暮るる干拓田を出づ
穂を逆さに棒に叩けばはじけたる胡麻がざらざら筵に溜る
台風の去りて穏しき高樫に風船かづらつぶら実を垂る