娘は、勢よく左右に手を振る、忽ち心を躍らすばかり暖な日の色に染まった蜜柑が五つ六つ、汽車を見送った子供たちの上へばらばらと空から降って来た。小娘はこれから奉公先へ赴こうとしており、その懐の蜜柑を窓から投げて、わざわざ踏切りまで見送りに来た弟たちの労に報いたのである。 暮色を帯びた踏切りと、小鳥のように声を挙げた三人の子供たちと、その上に乱落する鮮な蜜柑の色と――すべては瞬く暇もなく通り過ぎた。
💛この作品、昨日NHKラジオのすばらしい朗読を耳にして、ただただ涙があふれ出て、しばらく野末に蹲っていたのでした💛