牧野富太郎「断腸花」

 俗間の伝説では、昔一子女があって人を懐うてその人至らず、涕涙下って地に洒そそぎ、ついにこの花を生じた。それゆえ、この花は色が嬌やかで女のごとく、よって断腸花と名づけた。実際に咲いているその花に対せば、淡粧美人のごとく、じつにその艶美を感得せねばおかない的のものである。(牧野富太郎「植物知識」(講談社学術文庫) この花、一般には「秋海棠」と呼ばれる。正岡子規には「秋海棠によせて」を詞書にする短歌がある。