中西進著『卒寿の自画像ーわが人生の賛歌ー』

 かつて高校生に〈青春の自画像〉と題して「命の宿った表現」「未来を語ること」「含羞を失わないこと」を講じた。本書はその流れを汲みながら、育ちのころ、学びのころ、教えるころ、拓くころの四期に分けてそれぞれの期のテーマ(約十項目)を明快に解説している。噛み砕いて分かりやすい具体的例示に惹き入れられる。

「令」とは本来、善を表すよい言葉で、よくない指示は本来、命令ではない。「忖度」も最近、権力者に迎合する意味で使われ、言葉が穢れたと言われる。「令和」とは「令(うるわ)しき平和」である。この新しい時代を迎えてまず考えるべきは、トルストイの平和論だと言う。『万葉集』のみならず東西和漢洋に通じた博学である。