『ホトトギス』掲載句(昭和11年~12年)

 昭和11年11月号   雑詠・虚子選 

秋雨の町に家鴨を追ひ出せる   仙台 中村汀女

下り簗時々蝶の来ては去る    鎌倉 星野立子

たなばたの紙落ち石のなまめける 大阪 阿波野青畝

傘すぼめ傘ひらき海月去りてゆく 東京 山口青邨

立ちよろめき女等興ず遊び舟   東京 富安風生

堂々と露の柱の芭蕉かな     東京 川端茅舎

行きすぎて月の叢百合の見ゆ   蘆屋 高浜としを

蓮の花むとらんと向けし舳かな  新潟 高野素十

 昭和12年8月号    雑詠、虚子選

ネクタイを結ぶときふと罌粟赤し 東京 富安風生

尾長来ていよゝたわゝの若楓   東京 川端茅舎

まひまひの円輝きて椿浮く    鎌倉 松本たかし

櫻の実紅経てむらさき吾子生まる 東京 中村草田男

病人を負うて一里や閑古鳥    仙台 中村汀女

リラの花をとめは折りて家に入る 在伯林 山口青邨

ふなばたを逃げゆく蛸の面妖な 三豊高女 三木杜雨(嘉人)