古来美女たちのその実際生活が、当時の人々からいかに罪され、蔑まれ、下しめられたとしても、その事実は、すこしも彼女たちの個性的価値を抹殺することはできなかった。かえって伝説化された彼女たちの面影は、永劫にわたって人間生活に夢と詩とを寄与している。
【マダム貞奴】1872~1946 新派女優。本名=小熊貞。奴と名のって芸者となり、伊藤博文ら政府高官のひいきを得た。川上音二郎と結婚。貞奴の芸名で女優となり、人気を博す。
【樋口一葉】1872~1896 歌人・小説家。本名=なつ(奈津)。針仕事や小間物屋をしながら執筆を続けた。『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』など名作を発表。二十五歳の若さで逝去。
【竹本綾之助】 1875~1942 女義太夫。本名=お園。竹本玉之助と名のる。美貌と美声で人気を博し、娘義太夫の全盛期を招いた。綾之助を贔屓にした後援団体「堂摺伝」は有名。
【松井須磨子】 1886~1919 新劇女優。本名=小林正子。文芸協会の初公演「ハムレット」でオフェリアに扮し、好評を得る。島村抱月との恋愛事件。「復活」でカチューシャ」に扮す。抱月がスペイン風邪で急死。後追い自殺。
【平塚らいてう】1886~1971 社会運動家。本名=明(はる)。号=らいてう(雷鳥)。婦人解放運動のスローガン「元始、女性は太陽であった」市川房枝らと新婦人協会を結成、婦人参政権運動に尽力。