太宰治の『晩年』 山内祥史著

 太宰治研究のパイオニアが解き明かす第一小説集成り立ちの真相。太宰作品全体の書誌解説の編著が多かったが、本書は『晩年』一作に焦点を当てた研究書として貴重である。成立・経緯・発刊・献呈などに分けて論考されている。綿密な資料がそろっていて、卒論など執筆に役立つであろう。昭和五十七年香川県観音寺第一高校で文化講演した時の内容が重なる。その時の録音テープを今聞いてみると、心に深く刻まれる太宰が浮き彫りにされていて、今なお感銘を新たにする。母校に二度目の講演をお願いしたが、だめだった。