歌集『紺青』より10首

みんなみの紺青の海白波の騒ぐ渚に果てたるや君

紺青の海への挽歌に蘇生して羽ばたけ君よ若き日のまま

紺青に染むがごとくに漂へり白鳥は身を神にゆだねて

松風を琴弾く音と聞きなして瀨戸紺青の風に吹かるる

紺青は誰に語らむ由もなし寂しき時は渚を彷徨ふ

学歴も政治経済無縁なる紺青好みの師も今は亡き

紺青を好むと言ひし教師ありこの単純な一言忘れず

沈潜を色に還れば紺青になるはずだとは幼き私論

色好み風景の中今もなほ流浪はすれど行き着く紺青

根性と響き通へど紺青はしっとりとして奥深き色