~近隣没落風景~
進学の初志の適わず自死選びその家も今は跡形もなし
大農家売り払い都会に移住せしその後は知らず他人が住んで
姉妹六人皆嫁してゆき何十年ただ屋敷地に雑草茂る
恐ろしい伝染病と見なされて家族離散の家の影なし
大家族も女子の跡取り叶わずに買い手なき家蔦這ひ回る
立ち退きの移転後再び帰りけり農地のままで幾世も過ぎて
末っ子は戦没者にして家途絶え空き地に風の吹き過ぐばかり
女出来て男は逃亡(とんぼ)したりけり遺されし子もどこかに消えし
自死したる家いつまでも手が付かず狐狸住むほどの藪の中なる
家なき子というよりも子なき家子の立ち去りし上の侘びしや