「燈明」抄 島比呂志
楠の老木の下の 荒神さんには
フクロウが啼いていて 怖かった
ロウソクとマッチを握りしめて
薄暮の道を必死に走ったものだった
おじいさんは いま
あの荒神さんの楠の下蔭の闇がかもした
途方もなく深い神秘について考えている
闇には神が棲んでいる
神はエネルギーを消費しない
だから 闇は地球の救い主
おじいさんの中の子供は
いまも 闇を畏敬し
贖罪の燈明を 捧げ続けているいるのだった
文化十年(1812年)建之 楠の幹周り 350㎝