柚子 (花→実→湯)

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   ハナユズ(花柚子)  果実 が小型で早熟性。 語源は中国語の「柚 (you)」
現代中国語では「文旦」を指す。秋から冬にかけて実は黄色く熟す。
 ☆柚子の花…夏の季語。 ☆柚子の実…秋の季語。 ☆柚子湯…冬の季語。
 
  人棲まぬ隣家の柚子を仰ぎけり
 
 どういう事情でお隣は空家になったのかはわからない。けれども、敷地にある大きな柚子の木が香り高い実をたくさんつけているから、秋の気配が濃厚に感じられる。かつてそこに住んでいた人が丹精して育てあげた柚子の木なのだろう。柚子を見上げている作者は、今はいなくなった隣人へのさまざまな思いも、同時に抱いているにちがいない。今の時季だと散歩の途次、柚子の木が青々とした実をつけているのに出くわす機会が多い。しばし見とれてしまって、その家の住人への想いにまで浸ることがある。どうか通りがかりの心ない人に盗られたりしませんように、などと余計なことを願ってみたりもする。小ぶりなかたちとその独特な香気と酸味は誰にも好まれるだけでなく、重宝な果実として日本料理の薬味としても欠かせない。柚子味噌、柚子湯、柚子酢、柚子茶、柚子餅、ゆべし、柚子胡椒……さらに「柚子酒」という乙な酒もある。『本朝食鑑』には「皮を刮り、片を作し、酒に浮かぶときは、酒盃にすなはち芳気あひ和して、最も佳なり」とある。さっそく今夜あたり、ちょいと気取って試してみましょうぞ。柚子の句には「美しき指の力よ柚子しぼる」(粟津松彩子)「柚子の村少女と老婆ひかり合ふ」(多田裕計)などがある。利一はたくさんの俳句を残した作家である。「白菊や膝冷えて来る縁の先」。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)  (以上、引用させていただきました)