文題はこの上なく大切 『昭和わたしの証言』

最新刊『昭和 私の証言Ⅴ』美巧社刊に寄せて

 26人が寄稿している中で、一番に読みたくなるのは「紫雲丸事故」だ。

まず、題名から惹きつけなければならない。書名と同じ題名など論外である。

「紫雲丸事故」の体験談は表現の巧拙を越えて読ませる素材である。

ただ、この筆者萩原幹生氏は後年宇高連絡船長であったに過ぎない。それでもこの事故の追跡調査と慰霊を続けている立派な方である。『紫雲丸はなぜ沈んだか』成山堂刊の貴重な著書もある。あとがきには「死の運」(紫雲)をもって生まれた紫雲丸は平成五年にスクラップとなって、その悲運の生涯を閉じていると記す。

 大方の人々から忘れかけている紫雲丸事故は、高校三年の時だったので私は鮮烈に想起できる。ついでに言えば、この『昭和の証言』には拙作「鍬の戦士」を掲載させてもらっている。

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