硫黄島からの手紙(栗林忠蔵)

  栗林忠道師団長の留守宅妻子に宛てられた硫黄島からの手紙(昭和19年6月25日) 

 もしこの島が敵に取られたとしたら、日本内地は毎日毎夜の様に空襲されるでしょうから、私達の責任は実に重大です。それで皆決死の覚悟です。私も今度こそは必死です。十中九分九厘迄は生還は期せられないと思います。而かも戦闘はもう眼の前に迫って来て居るので、疲れて睡っている時の外は頭の中が惨烈な戦闘、そして玉砕、そして其の後の妻子の身の上が如何なって行くだろうか?と云う事ばかりです。日本として今最も大切な要点の守備を命ぜられたからには、任務上已むをえない事です⋯鬼畜米軍の為国難に殉ずる事になります⋯