瀬戸内〔燧灘〕文化圏(西讃海浜)

 香川県北部は瀬戸内海(塩飽諸島)に面する。県西部は燧灘に面して愛媛県東部につながる。高松を中心とする香川県のその西端に過ぎない。異端児と言えば言い過ぎであろうが、愛媛に隣接し、高松以東には隣接感がない。いわば、鳥坂以西の三豊平野・観音寺市は保守・孤立的であると見られることもある。島国根性の一端かもしれない。

 燧灘の存在・外聞は大きくはない。瀬戸内海の中央に大きな位置を占めながら、政治的経済的に重視されることはない。隣接都市をいくつかすぐ挙げられるか、心もとない。試しに地図を開いて見れば分る。愛媛四国中央市とあっても香川観音寺市とどれほどのものか。決して郷土を賤しめるつもりはないが、全国の皆さんに名乗りを挙げても

空しくなるだけである。

 朝日は山から昇る。神代の昔から山から昇った。それは神々しかったと思った人もあろうが、夕日は海に沈んだ。遠く中国地方(安芸・備後)ではあっても、彼方遠方で見えぬ日が多く、水平線に夕陽は沈む。神々しさ、厳かさ、西海、あの世の感さえする。

~夕日の沈むのを見に海辺に出る、この悦楽があって、燧灘沿岸の予讃海辺の住民は過ごしてきた。~夕日の沈む海辺に行く。果ては夕雲がかかり、水平線を見届ける日は少ないながら、毎日毎夕の夕日は神秘。手を合わせたくなる太陽。明日は旭日となって迎えることを約束してくれる信頼感。これほど信頼感があるものがあろうか。

 あなたの愛をあなたへの愛を信じないわけではないが、大方は裏切られ裏切りもして過ごしてきて、残されたわずかな出逢いを大切にしたいとは思うものの不確かな人間の諸相とは裏腹に、日没の次に日の出が予約されて間違いのない自然の摂理、神のなすわざに敬服せざるをえない。

 我は風景を愛す。雲のたたずまい、風のさやぎ、潮の匂い、そして太陽の恵みを⋯