2024-05-04 瀬戸内海の発見 剣持文庫 5つ星のうち5.0 近代的風景観・多島海景としての瀬戸内海 2006年6月27日に日本でレビュー済み Amazonで購入 本書は農学博士の学位論文「瀬戸内海の近代的風景の発見と定着ー風景間の変遷過程に関する研究ー」に基づいて書かれたものである。文学の風景描写を造園学者が分析する視点が新鮮に感じられる。 日本人の眼に映る風景は大きく変化した。見る物自体ではなく、それをどう認識するかが変化したのである。伝統的風景観から近代的風景観への移行である。前者は歌枕の地や故事・伝説に由来する名所旧跡等であった。後者は欧米人の客観的で科学的な視線の影響で、自然景や人文景といった近代的風景として見るようになった。田山花袋は前者〈厳島〉より後者〈瀬戸内海〉を賞賛している。意味の風景より視覚の風景として「瀬戸内海の発見」である。瀬戸内海国立公園の多島海景強調している。「自然景から人文景まで多様な風景を見いだせる。瀬戸内海は風景の重層性において比類ない。 本書はこのような瀬戸内海について【風景間の変遷による風景の変貌】を論じて、充実した瀬戸内海景論に仕上がっている。 (18年前の剣持文庫マイレビュー入力済のものを再掲)