『星と半月の海』川端裕人
清冽で、シンプルな文章の、テンポのよさに引き込まれる。
表題作は、ジンベエザメを飼育・観察する女性獣医を主人公としている。「星」と「半月」が二頭に名付けたニックネームであることが途中で分かる。「わたし(リョウコ)」は外人の研究者エルマ、リンジーとともに海中に潜って魚たちの生態を観察している。その体験・記録のようであって、心の動きと自分の人生(娘美月を産み落とす母親)まで重ねて述べられており、生命の輝きを感じさせる作品に仕立てられている。「半月」は死んでしまったが、「星」は放流する。やがて、青い海に溶け込むように消えていく。
その瞬間、星の体から無数の光の粒が弾け飛んだ気がする。わたしの内面が反転する。外へ転がり出す。娘の存在を感じる。漂う。拡散する。感情を伴わない意図せぬ涙が込み上げてくる。
このような感覚的で鋭利な内面描写を展開して、現代的フィーリングにかなう文章表現になっている。「底知れない青に揺れる」青の感覚に満ちた爽やかな作品として余情深い佳品である。
表題作は、ジンベエザメを飼育・観察する女性獣医を主人公としている。「星」と「半月」が二頭に名付けたニックネームであることが途中で分かる。「わたし(リョウコ)」は外人の研究者エルマ、リンジーとともに海中に潜って魚たちの生態を観察している。その体験・記録のようであって、心の動きと自分の人生(娘美月を産み落とす母親)まで重ねて述べられており、生命の輝きを感じさせる作品に仕立てられている。「半月」は死んでしまったが、「星」は放流する。やがて、青い海に溶け込むように消えていく。
その瞬間、星の体から無数の光の粒が弾け飛んだ気がする。わたしの内面が反転する。外へ転がり出す。娘の存在を感じる。漂う。拡散する。感情を伴わない意図せぬ涙が込み上げてくる。
このような感覚的で鋭利な内面描写を展開して、現代的フィーリングにかなう文章表現になっている。「底知れない青に揺れる」青の感覚に満ちた爽やかな作品として余情深い佳品である。