文藝一般

古今の名歌名詩

山口誓子二句

佛足の法輪の上花楓 誓子 香川県観音寺市八幡町興昌寺 新茶佳し大水上の霧こめて 誓子 香川県三豊市高瀬町二宮玉田

夕暮れの時はよい時、限りなく優しいひと時。

夕暮れの時はよい時、限りなく優しいひと時。 それは季節に関わらず、母の懐に帰るひと時。

滝沢馬琴『椿説弓張月』の敵討ちの舞台

白縫が夫源為朝の仇討ちをする舞台琴弾八幡宮(香川県観音寺市)

「火山地帯」九州文芸同人誌

「火山地帯」とは鹿児島県鹿屋市を拠点とする文芸同人結社「火山地帯社」の同人雑誌で、1958年の創刊以来50年以上の歴史を重ねています。

名文にはどんなものがあるか

中村明著『名文』ちくま学芸文庫 名文とはどのような文章だろうか。名文の条件は「匂うがごとく」「品格」があり、「すっきりと判りやすい」「通達性」がなければならない。悪文と駄文の違いは自ずから分かる。 国木田独歩『武蔵野』 夏目漱石『草枕』 森鴎…

与謝野晶子・鉄幹の満蒙遊記

『鉄幹晶子全集』第26巻に所収 ◆満蒙遊記(昭和3年) 与謝野鉄幹と晶子、円熟期の歌文・評論集である、本巻前半の題目は以下の通り 【満蒙遊記】 満蒙遊記の初めに(寛) 出発と船中(寛) 大連雑記(寛) 金州以北の記(晶子) 満蒙の歌(寛・晶子) 奉天に…

五木寛之の生き方

五木寛之の生き方 齢八十にして、なおダンディーな作家五木寛之。医薬に頼らない縄文人の生き方による人生の歩み、紹介される。表現手段に上下はない。何事であれ、自己表現は貴いとする。その人の独自性を生かした表現が尊い。自分なりの自然な健康法を見付…

月今宵

月今宵 金木犀の 匂ひ立つ 雅舟

曼珠沙華と七日月

月今宵 私独りの 曼珠沙華 雅舟 曼珠沙華 独りの刻を 愛す哉 雅舟

舞の海の好きな歌

相撲は日本古来の伝統文化、神事でもあると説くのが舞の海秀平である。

島比呂志の名詩「燈明」

移動式詩碑「燈明」 …贖罪の燈火を捧げ続けている…

海音佳句「王冠」の紹介

涼野海音さんの『俳句研究』2011秋号に掲載されている佳句「王冠」7句を 本人の許可なく、勝手に紹介させていただきます。お許しください。

真野響子の一句

山笑いその上に立つ伊予の城 真野響子 (愛媛県松山城を詠める)

有名人の書斎

『センセイの書斎』内澤 旬子 31人のプライベートの書斎がイラストと文章で紹介されていて興味がわく。 養老孟司…東西の解剖学の古典、標本と図鑑にあふれた書斎。 金田一春彦(故人)…琵琶のあるコトバのメロディーが聞こえてきそうな書斎。 荻野アンナ……

僕は小説を一番多く読んでいる

『小説の終焉』川西 政明 「僕は小説が好きだ。日本で小説を一番多く読んでいる一人だと思う」と自負(豪語)する文芸評論家だけある。日本近代小説の終末宣言をだれが一体できるだろうか。「私の終焉」「家の終焉」「性の終焉」「神の終焉」というように近…

巧妙なトリック

『小林秀雄先生来る』原田宗典 サブタイトルを付さない本書。書名だけから常識的に判断すれば、創作劇とは思われない。 更に、装丁で渚に立つ小林秀雄らしきシルエット写真を予め見れば、評伝・解説書かとも錯覚する。しかし、文芸書を中心にする出版社のも…

「耐乏」の時代を待望する

『老いの一喝』上坂冬子 日本人としての心のたたずまいを糺す本である。 我慢して耐えるしかほかに方法がない状況の到来を、著者は切望していた。耐乏精神は努力で身につくものではない。耐える姿勢が固まったところで、善悪の基本をばかばかしいほど単純に…

簡潔な文章

『問題があります』佐野洋子 表題作「問題があります」は、45編の寄せ集めエッセイ全体にかかる「問題提起」を意味しない。その中の1編の題名にすぎない、しかも、この言葉は意味深長ではない。戦前北京に住んでいた時ロシア人と同居していて、その人は会…

旅先で見た何げないもの

『イカ干しは日向の匂い』武田花 日常では身近にいる猫が好きなのか、冒頭が猫の写真であり、本書フォト48枚中9枚が猫である。26篇の随筆は大半が外に出歩いて見たもの、何げないものが多い。美しい草花には興味がないように、場末の看板、樽瓶缶、とい…

生きる意味を問う対話

『何のために生きるのか』五木寛之 五木…「坂上の雲」という言い方がありますね。司馬(遼太郎)さんと話していて、僕は面白いなあと思ったのだけれども、『坂の上の雲』が高度成長の応援歌のように思われた時期がある。それを司馬さんは苦々しく不愉快に思…

人間の極限の時

『わが人生の時の時』石原慎太郎 40掌編の中から戦争に関連する3編を取り上げてみよう。 「人生の時を味わいすぎた男」は、真珠湾攻撃に参加した操縦士が、ゲイバーになっている不思議さが語られている。あの時あの真珠湾で死ななかったし、その後数々の…

「火垂るの墓」と看護者の感性

14日(木)のみとよ准看国語は野坂昭如「火垂るの墓」を取り扱います。 妹節子の最期を看る兄清太の感性は、看護婦の鏡であります。

幻影の襞の深さ

『白暗淵 しろわだ』古井由吉 表題作「白暗淵」のタイトルが全てを象徴している。 高校時代に女教師が『聖書』創世記冒頭の話で「元始(はじめ)」「黒暗淵(やみはだ)」と板書して読んだ時のことを半世紀を経て回想する。小生と著者は同期なので、同時体験…

耳にはよしきり(行行子)、頬には光り

60年前、高校一年生現代国語の教科書に出ていた下の詩を思い出しました。 今、外ではギョウギョウシ、ギョウギョウシとせわしなくヨシキリが鳴いてます。 富士山 草野心草 川面(かわづら)に春の光はまぶしく溢れ そよ風が吹けば光たちの鬼ごっこ 葦の葉…

読むことで書き直す

『小説の読み書き』佐藤正午 この人独特の言い回しが面白い。「文章を書くとき、人は書き直すという意味でその言葉を使っている」すなわち「推敲」ということになるのだろう。そして、読者が「読むことによってさらに小説は書き直される」とも述べている。こ…

肩肘張らず

『にほん語観察ノート』井上ひさし 〈外来語の表記〉「モチベーション」と発音しても外国人に分からない。「モティヴェーション」と発音すると、「動機づけ」であることが分かるのではないか。 〈熟さない外来語より日本語を〉「スキーム」「コンセンサス」…

私には失望は無縁だった

『あらすじで味わう昭和のベストセラー』井家上隆幸 一編のあらすじが本書では数ページにわたってくわしいので、ありきたりの粗筋ではなく、かなり細かいストーリーもわかる。多くは大衆文学である。 大佛次郎『鞍馬天狗』吉川英治『宮本武蔵』下村湖人『次…

青の感覚

『星と半月の海』川端裕人 清冽で、シンプルな文章の、テンポのよさに引き込まれる。 表題作は、ジンベエザメを飼育・観察する女性獣医を主人公としている。「星」と「半月」が二頭に名付けたニックネームであることが途中で分かる。「わたし(リョウコ)」…

時代には遅れよ

『正しく時代に遅れるために』有栖川有栖 タイトルのもつ効果を考えると、本書は意表を衝いたおもしろさがあり、ちょっと読んでみようかという気にさせられる。 まず、巻頭に挙げた「六段階の距離」の紹介…すべての人間は〈六段階の距離〉でつながっている。…