冬の使者「都鳥」来たる

 
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  ユリカモメ(都鳥)は《冬の使者》 すでに故里の河口に訪れている。  
     都 鳥        『伊勢物語
 猶行き行きて武蔵の国と下総の国との中にいと大きなる河あり。それをすみだ河といふ。
  その河のほとりにむれゐて思ひやれば、限りなくとほくも来にけるかな、とわびあへるに渡守り
「はや舟に乗れ。日も暮れぬ」といふに、乗りて渡らんとするに、皆人物わびしくて京に思ふ人なきにしもあらず。さるをりしも、白き鳥の嘴と脚と赤き 鴫の大きさなる 水のうへに遊びつつ魚をくふ。  京には見えぬ鳥なれば皆人見知らず。渡守に問ひければ「これなむ都鳥」といふを聞きて
   名にし負はば いざ事問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと
 とよめりければ舟こぞりて泣きにけり。
 ユリカモメ鳥寄せには、パンくずをちぎって投げる。
 一切れ、二切れをやるだけで、よってたかって、奪い合い。
 人を怖がらず、身近まで寄ってきて、おねだり、集団交渉。
 もっと出せ、もっと出せ、とせがむ。
 家に帰って食べるつもりのお菓子も結局やってしまう。
 なくなると、さっと遠くへ飛び去る「現金さ」
 
  さて、『伊勢物語』の「東下り」の在原業平の歌があまりにも有名である。そのため「都鳥」が文学に登場するのはここからだと思っている人があるかもしれないが、
 『万葉集』に大伴家持がすでに詠んでいる。
  船競ふ堀江の川の水際に 来居つつ鳴くは都鳥かも(巻二〇ー四四六二)
 口語訳すれば「船が競って漕いでいる堀江の川の水際に来て居つつ鳴くのは、都鳥であろうかなあ」という意になる。
 この都鳥はカモメ科のユリカモメ(百合鴎)とされている。小型のカモメで、白い羽色に赤い嘴、赤い脚の対照が、優美である。主に海上に群棲し、河下から遡っても棲息する。初冬になると日本各地の河口に姿を現すので「冬の使者」とも言われる。砂浜・浅瀬の魚貝類を餌としている。
 普通は人に近づかないが、餌付けをすると、人にも群をなして近寄ってくる。 数年前、そして先日、冬京都の渡月橋を渡ったが、都鳥がまといつくように飛んできて、迎えてくれた。親しみ深い鳥だという印象が強い。
 なお、現在の和名がミヤコドリ(千鳥科)ではなく、ユリカモメ(鴎科)を古典に詠まれた都鳥とされている。
 澤瀉久孝は『萬葉集注釋』で「鳥の習性から考へてこれは千鳥科のミヤコドリでなければならい」 と述べているが、断定はできない。