『鯨と呼ばれた男菅原道真』

東茂美著『鯨と呼ばれた男菅原道真』2019年 海鳥社

全12章の道真論考であるが、第4章「讃岐守の時代」のみを摘読、その一部のみを紹介する。送別会の詩でも「何為恨」と恨みとしないと詠む。ただ、他人に左遷と言われるのが悔しい。父祖は学儒が本分であって、国司になって外地に転出した人はいないので、道真は人の耳目を気にしていた。

 宮中にいた時と違い棹歌(野卑な舟歌)ばかり、華やぐ内宴に召されることなく、子供に勧められて憂いを晴らす酒でも飲もうとしている。愁眉が開けるわけではないが、憂さ晴らしをする。萱草(忘れ草)では効き目が遅い。

 白楽天には三友があった。酒と琴が入る。道真は酒が好きでもなく、弾琴友は苦手。「詩友は独り留まる真の死友」と詠むのは、死ぬ時まで離れることのない死友はいたようだ。誰か分からない。

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