梅の花今咲けるごと散り過ぎず我が家の園にありこせぬかも(巻五・八一六)
梅の花咲きたる園の青柳は蔓にすべくなりにけらずや(巻五・八一七)
春さればまづ咲くやどの梅の花ひとり見つつや春日暮らさむ(巻五・八一八)
年のはに春の来らばかくしこそ梅をかざして楽しく飲まめ(巻五・八三三)
梅の花今盛りなり百鳥の声の恋しき春来るらし(巻五・八三四)
春の野に霧たち渡り降る雪と人の見るまで梅の花散る(巻五・八三九)
梅の花折りかざしつつも諸人の遊ぶを見れば都しぞ思ふ(巻五・八四三)
我がやどの君松の木に降る雪の行きには行かじ待ちにし待たむ(巻六・一〇四一)
一つ松幾代か経ぬる吹く風の声の清きは年深みかも(巻六・一〇四ニ)
たまきはる命は知らず松が枝を結ぶ心は長くとぞ思ふ(巻六・一〇四三)