『旧制一高の非戦の歌反戦賦』(稲垣真美著)

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         一高寮歌    清水健二郎 作詞  

1、めぐるもの星とは呼びて    罌粟けしのごと砂子すなごの如く
   人の住む星はまろびつ

 2、運命さだめある星の轉べば    靑き月赤き大星おぼし
   人の子の血潮浴びけん

 3、紫に血潮流れて       ふたすぢの劔と劔
   運命とはかくもいたまし 

12、ほこりかに運命を秘めて    星轉び民等謳はん
   天地あめつちあけに映ゆると

        (旧制一高第53回祈念祭寮歌)

 運(めぐ)るもの星とは呼びて/罌粟(けし)のごと砂子の如く/人の住む星は転(まろ)びつ
この第一節から始まる「一高寮歌」はただものではない。鋭く時代を感じ取る作者、そしてそれを見抜いて『反戦譜』として上梓した本書著者に一目を置く。瀬戸内の海辺に育ち、大都に遊学、戦時の世相に埋没せず「軍事教練・査閲に対するアンチミリタリズム」「特高憲兵による弾圧と寮生の受難」の中で、かろうじて、精一杯生きる青年の純粋な姿、その心根の丈高さが伺える。必死の抵抗の鎮魂の手向けはこういう書を言う。

  この歌詞は、万葉に通じる荘重な響きを基調としながら、この世界を「運命(さだめ)ある星」と思い定めて、その星に宿る現世が予知しない方向に変転し、いたましい争いの中へ国々や人々を引き入れ、やがて美しい理想を懐く若者たちが悲愴な運命に導かれることになる、時代の悲哀(かなしみ)を伝えているようだ(本書14頁)

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   清水健二郎

 観音寺市出身 旧制三豊中学校、旧制卒業一高・東大卒業

 昭和20年7月18日 戦艦長門の艦橋で爆死、行年25歳

 郷里観音寺市三本松墓地に墓碑あり。

 

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