2022-03-26 橘曙覧「楽しみは~」十首歌 江戸末期の歌人橘曙覧の「独楽吟53首」の中から たのしみは珍しき書人にかり始め一ひらひろげたる時 たのしみは紙をひろげてとる筆の思ひの外に能くかけし時 たのしみは妻子むつまじくうちつどひ頭ならべて物をくふ時 たのしみは物をかゝせて善き値惜みげもなく人のくれし時 たのしみは空暖かにうち晴し春秋の日に出でありく時 たのしみは朝おきいでゝ昨日まで無りし花咲ける見る時 たのしみは意にかなふ山水のあたりしづかに見てありくとき たのしみは常に見なれぬ鳥の来て軒遠からぬ樹に鳴しとき たのしみはあき米櫃に米いでき今一月はよしといふとき たのしみは物識人に稀にあひて古しへ今を語りあふとき