大江健三郎の最後の詩

傷だらけの 私を裸にし、

自分で集めた薬草の

油を塗ってくれながら、

母親は 嘆いた。

子供たちの聞いておる所で、

私らは生き直すことができない、

 言うてよいものか?

そして 母親は私に

永く謎となる 言葉を続けた。

私は生き直すことができない。しかし

私らは生き直すことができる。

 最後の小説『晩年様式集イン・レイト・スタイル』