『名をこそ惜しめ 硫黄島 魂の記録』津本陽

 不幸にして乱世もきわまる時期に、燃えるように熱い地下陣地で命を絶たれ、肉弾戦で死力を尽くして亡くなられた英霊に、万斛の涙と感謝を捧げるものである(本文あとがき結び)  「ここは、島全体が墓場なんですよ」その言葉は私の脳裏に焼き付いている。今もなお、戦死者の六割に及ぶ遺骨がこの島に残されたままなのだ。⋯本書に描かれているのは「戦記」ではない。迫り来る死に向き合ったときの「人間の極限」の姿である(解説の結び) 文春文庫