秋咲ける菊にはあれど神無月時雨や花の色は染めける 紀 貫之
白菊の散らぬは残る色顔に春は風をもうらみけるかな 藤原定家
さを重ねてにほふ白菊に冬枯れ知らぬませのうちかな 河田東満
紫にうつろふ菊も今朝見れば皆白妙の霜のきせ綿 塙保己一
咲く花に遅れて染めしこの葉さへ散り敷く庭に残る菊かな 小沢蘆庵
霜にたへていつまでも咲く一枝の菊に日の射し身に染むくれなゐ 若山貴志子
凡そに花の過ぎたる寒菊は日の射す方に傾きそめつ 生方たつゑ
壺にして開ける花の寒菊の黄に対ひつつおもひ堪へをり 谷 馨
地ひくく咲きて明らけき菊の花音あるごとく冬の日は射す 佐藤佐太郎
菊を焚く年々にしていや寒き心の色の白菊を焚く 馬場あき子