鎮魂歌 (10首)

戦争未亡人の母三人の子を育て上げると夫の下へそそくさと逝きし

一つ違いの姉戦没遺児として四十年挨拶もなく亡父の下へ

灯台出のあいつよりは上だよと言ってくれた友先に逝きたり

灯台か鏡台か知らぬが挫折して井戸に飛び込み姿を消しぬ

有名校妄信をせし若者の脆弱な生特攻死と較べてもみよ

三人を列記した墓標戦没の父母の涙乾かざるべし

継母来て進学も挫折それだけで命はかなむも今知る人もなし

予備校に通う憂さ晴らし国道をバイク暴走自滅の若者

罵った姑もまた罵られた嫁もまた前後して亡くなったと言う

唯一の友にも恋人にも逃げられて青木ヶ原のどこをさまよう