「菫草」芭蕉師弟三吟

  熱田の白鳥山においての興行(熱田三歌仙)

何とはなしに何やら床し菫草  芭蕉

 編笠しきて蛙聴き居る    叩端

田螺わる賤の童のあたたかに  桐葉

 公家に宿かす竹の中みち   芭蕉

月曇る雪の夜桐の下駄すげて  叩端

 酒飲む姥のいかに淋しき   桐葉

双六のうらみを文に書尽し   芭蕉

 琴爪をしむ袖の移り香    叩端

髪下す侍従が娘おとろへて   桐葉

 野々宮のあらし祇王寺の鉦  芭蕉

虚樽に色なき草をかたげ添へ  叩端

 芸者をとむる名月の関    桐葉

面白の遊女の秋の夜すがらや  芭蕉

   (後略)