猪熊美術館にて

カメラの前のモノローグ 埴谷雄高猪熊弦一郎武満徹』マリオ・A
 
 こういう貴重なインタビュー記録があったのかと驚かされる。もの言わぬ、言いたがらない前衛作家、真の(?)アーチストたちである。エポックメーキングの3人の芸術家の本音のところをちゃんと聞いている。
 埴谷雄高…「見なかったものも見るのがぼくの夢」「他人の書けないことを書く」「中上健次との喧嘩」「人類は滅亡するもの」「墓場は火星につくる時代」…信念を曲げない精神力の強さに感心する。
 猪熊弦一郎…「骨董的世界にいる日本画」「日本画の世界をジャンプする」「機械では表現できないものを」「僕の絵はどんなことをしても僕の絵」…古いものに拘らず新しいもの・自分のものを創り出そうとする若さを感じさせる。
 武満徹…「日本的な音との出会い」「響きから自分の音をつくる」「日本人にはアレグロのセンスがない」「死ぬまでにやりたい仕事」…すべてから自由でありたいという強い思いで生きている。
 3人の芸術様式は違え、ピュアーで素朴な生き方をしているところが共通している。現在私たちは、デジタルとバーチャルの世界にどっぷりと浸かり、それが当たり前になりかかっているが、しばらく足を止めてこれらアーチストの生前の声に聞き入るのも無駄とは言えまい。