生きていたら描いた画

奥の細道画巻』蕪村
 
 本書は芭蕉の『奥の細道』を蕪村が俳画にしたものである。蕪村の俳画は、画俳両道を完全にマスターして初めてできる画域である。芭蕉は至る所、古跡で懐旧の涙に咽んでいる。蕪村の感銘も同じで、風光の美より人間愛にうたれている。描くところのシーンはすべて人物画である。芭蕉も画が得意だったが、このような画巻を描く暇がなかった。命永らえていたら、蕪村に描いてもらう前に自分で描いていたかもしれないと言う人もある。