歌誌「コスモス」同人・野口澄子の歌10首
農われの素顔をほしいままに灼き地平の果てに大き日は落つ
青き芽のそこそこ萌ゆる穭田に筋なし走る北風の見ゆ
操らる人形なりし明け暮れを良き嫁御ぞと人の言ふらし
希典が植ゑしホルトのと記されて西行庵に今を繁れる
はからずも子の買ひくれし師の歌集余生をかけて読まんと思ふ
夫よりは先に死ねずと執しゐて梅咲く朝や熱下り初む
サヨンの碑訪ねきたれば愛国の二字は削られ草に埋むる
理解ある姑を演じて疲れたり庭にオクラの黄の花傾ぐ
震災の瓦礫の中に身を賭して隣人救ふ誠を見たり