芭蕉「ほととぎす」発句に付句を楽しむ

「ほととぎす」と題する前句付

ほととぎす今は俳諧師なき世かな  芭蕉  

 自ら名乗るを忘れるなゆめ    雅舟

ほととぎす裏見の滝の裏表     芭蕉

 裏に届かず恨めしいかな     雅舟

ほととぎす大竹藪を漏る月夜    芭蕉

 去来落柿舎嵯峨日記にも     雅舟

ほととぎす鰹を染めにけりけらし  芭蕉

 鳴いては赤き血を吐くなゆめ   雅舟

ほととぎす消え行く方や島一つ   芭蕉

 淡路の島は近くて遠し      雅舟

ほととぎす声横たふや水の上    芭蕉

 甥桃印の死にあへる時      雅舟

ほととぎす鳴く鳴く飛ぶぞ忙しはし 芭蕉

 和歌は一瞬俳諧は連鎖      雅舟

ほととぎす鳴く音や古き硯箱    芭蕉

 不ト一周忌琴風興行       雅舟

ほととぎす鳴くや五尺の菖草    芭蕉

 あやめもしらぬ恋もする夏    雅舟

ほととぎす正月は梅の花咲けり   芭蕉

 無理言ふなかれ夏杜鵑      雅舟

 ※新書版『芭蕉との対話』2018年刊(松尾芭蕉×剣持雅舟共詠)による