水の流れ 川の流れ 海の流れ 山の流れ⋯ないはずなのに⋯山脈があった
山脈を「やまなみ」と言っただけで 詩的になる 校歌になる 人生の歌になる
やまとことばはかくも心をやわらげ ふるさとのことば ふるさとそのものとなる
さぬきやまなみあおぎつつ まなびやをすだってゆく おさなともだちとわかれる
川のながれのようにゆるやかにとめどなくひともまたたまわりしいのちのままに
人生とは別れ 文学は別れの文学 離合集散の悲喜劇から抽出された別れの深重さ
偽りの同居生活の歪みを描くのも 人の自由とは言いながら 注視するに堪えない
一歩出て二歩出て思い切って走り出て全ての柵をかなぐり捨てて真実は見えてくる
他者の伺い得ない個人の内実心の動き流れの命脈を誰が知り得よう それが文学の核
流れつく先の誰にも分からない命の果ての虚空に向かって流れ着く境は知れない